心惹かれるブルー。美意識を追求した本田星陶所の作品 | Dear Okinawa,

よみもの

2021/02/17 09:33

「教会が好きなんです。足を踏み入れた途端、神聖な雰囲気が漂っていて、心が洗われる感じがしますよね。阿修羅像を目の前にした時もそう。静寂と緊張感に包まれて、ざわついていた気持ちが静まるあの感じ…。

作品を製作する際は、そういう空気感を大事にしていきたいと常に思っていて、品や、自分の中で眠っていた美意識を呼び起こしてくれるような作品を生み出していきたいと思っています」

そう話されるのは、大阪生まれ、奈良県育ちの陶芸家 本田伸明さんです。

「小学生の頃は野球少年でした。中学生からはずっとバスケットに夢中で、勉強は嫌いでしたから、高校卒業後は大学に行かないで働こうと思っていました。

進学校だったので、周りはみんな当たり前のように大学受験のための勉強をしていましたが、僕は特にやりたいこともなかったので。

その頃は芸術にも興味はありませんでした。そして、早く家を出たかった…。3人兄弟の末っ子で、居心地が悪かったのかもしれません。

干渉されない場所に行きたいという思いが強くなっていました」と当時の心境を語ってくださいました。

そんな本田さんは、高校3年生の時に友達から誘われて京都国立近代美術館で開催されていた「エディンバラの工芸展」へ。

そこで展示されていたガラスの作品を目にした瞬間、衝撃が走ったと言います。「かっこいい!何だ、これは!と思いました」と本田さん。

このことがきっかけとなって、進路が大きく変わることに。本田さんは、美術大学へ進むことに決めたのです。

「兄の親友のお父さんが、美術大学の受験者を対象とした画塾(絵画教室)の講師だったんです。

うちは金銭的に余裕があるわけではなかったので“浪人しないこと”と“国公立の大学へ入学すること”を条件に、塾に通わせてもらえることになりました」

美術大学への入学を希望する場合、早い段階から画塾に通い始め、受験対策をスタートさせる生徒さんが多いそうですが、本田さんが入塾したのは高校3年生の夏が過ぎた頃でした。

「みんな死ぬほど上手いんですよ。圧倒されっぱなしでした。彼らにはどう頑張っても勝てないと思いました。でも、負けたらあかん気がしていました。

上手く描けるようになるまで、諦めたくなかったんです」と本田さん。

ある日「お前の今のレベルなら、沖縄の大学に行けるぞ」という先生からのひとことで、本田さんは沖縄の県立芸術大学を目標に、受験対策を始めました。そして見事に合格。

それまで美術に興味のなかった体育会系の人間が芸術大学に合格したことに、周りはびっくりしていたそうです。

大学入学後は様々な課題をこなしつつ、毎日のように海通いをしていたそうです。

「沖縄の海の美しさには本当に感動したんです。独特な文化も面白くて、大学もですけど、早く沖縄に馴染みたいと思っていました」

大学卒業後は、当時南城市にあった赤瓦工場の新規プロジェクト(薪窯の製作)立ち上げメンバーに抜擢され、窯の管理を任されました。自身の作品もこの窯で焼き上げ、「せっかく作ったんだから」と、陶芸のグループ展に出品。その後、2015年に独立をしました。

本田さんが目指しているのは、絵画のような作品。

「僕が作りたいのは、美術品なんです。昔から、美しいものやカッコイイものが好きでした。

それぞれの作品にテーマがあるのですが、「ブルーシルエット」はフォルムや影を表現することを大切にしています。例えばこの花瓶をポンと置くと、その場に静寂が訪れるような…。凛とした品のある、芸術性を兼ね揃えた作品をこれからも生み出していきたいです」

本田さんの美意識と感性が生み出したこちらのマグカップでコーヒーを味わってみませんか?

豆を選んで、挽いて、コーヒーを淹れる一連の流れも、きっと特別な時間になるはずです。

 

本田星陶所

https://www.hondaseitousho.com



Photo &text:舘幸子

INSTAGRAM

FOLLOW US ON INSTAGRAM