Dear Okinawa,

2021/02/01 15:47

沖縄の伝統的な焼き物“やちむん”も味があって良いけれど、ポップで現代的な柄を落とし込んだアトリエクッチャネ(atelier qucchane)の陶芸雑貨は、枠にとらわれず自由。

毎日の食卓をワクワク感で満たしてくれるような器は、地元の人や観光客からも人気です。


アトリエの名前は“食っちゃ寝”から。「人間が生きていくうえで必要不可欠な“食べて寝る”という行為を大事にしてほしい」という想いからこう名付けられました。

理由はもうひとつ。クッチャネになる前の工房名がQueue(クー)だったこともあり、頭文字を引き継いだ形でもあります。クーはフランス語で尻尾。


「尻尾って、あっても無くても生きていけますよね?でも、あったら可愛い。私たちの器も同じで、無くても困らないけど、あったら食卓が楽しくなると思うんです。」


初代のチーフは、大人気の陶芸家 中村かおりさん。中村さんが作家として独立した後、当時スタッフだった戸村勇気さんが引き継いでチーフに。


山口県出身の戸村さんは、沖縄県立芸術大学の出身者。

中学生の頃から油絵を描いていたそうですが、大学に進学する前には「今までやっていないことに挑戦してみたい」という思いが芽生え、工芸科で陶芸を専攻。「油絵の他にイラストも描いていたんですけど、今までやってきた平面以外の立体や、伝統的なことにも興味を持ちはじめたんです。特に陶芸に強い思い入れがあったわけではないんですけど(笑)」


在学中は課題をこなすことに必死で忙しく、陶芸そのものを“楽しい”と感じることはあまりなかったそうですが、卒業直前に「自分の作品を作ってみたい」という気持ちが強くなり、大学院に進みました。


その頃、アトリエクッチャネでは陶芸教室を実施していました。

戸村さんはアルバイト講師として採用され、大学を卒業すると同時に工房に就職。アトリエクッチャネの商品のデザイン・制作も担うようになりました。


「陶芸家は“作品を作って、売って、その収入で食べていく”じゃないですか。シンプルで分かりやすいですよね。サラリーマンは、自分が携わった仕事がどのようにお給料になるのかが明確でないので、そういうのは僕には向いていない気がしたんです」


アトリエクッチャネは、会社組織の中のひとつの部門だそうです。

東京に親会社があり、沖縄は子会社のような存在で、工房には現在4人のスタッフが在籍。

「職人の世界には“親方”と“弟子”という師弟関係がありますが、僕たちの工房はみんな同じぐらい発言権があります。


最初から最後まで一人の作家が作り上げた作品もありますが、みんなの意見が混ざって、足したり削ったりしながら完成する作品の方が圧倒的に多いです。」と話す戸村さんに「そこが他の工房と違う魅力ですよね」と付け加えるのは、沖縄出身の上原万里子さん。


前職は銀行員だったという上原さんは、現在アトリエクッチャネの運営を担当しつつ、製作もこなします。


遡ること約10年前。上原さんは、友人に勧められて浦添市美術館で開催される沖縄アートフェスティバルにボランティアスタッフとして参加しました。そこで知り合ったのが、アトリエクッチャネの創業メンバー。モノづくりはそれまで経験がなかったそうですが、見初められスカウトされたそうです。


「関わったことのない分野だったのですが、興味はあったので好奇心だけで飛び込みました。知識も経験もゼロだったので、一からのスタートでした。不安も少しはありましたが、文化祭の前夜のようなワクワク感もあったんです。実家が沖縄なので“失敗しても死ぬわけじゃないし!”と思って、誘いを受けることに(笑)」


運営と経理、製作をこなす上原さんは、運営側と現場(製作スタッフ)の間で板挟みになることもあるそうですが「思っていることは心の中に閉じ込めておかず、オープンに話すのでストレスは溜まりません。」と上原さん。




個性的なメンバーが集まるアトリエクッチャネ。

一見バラバラなようですが「向かっている方向が同じなんです。全員それぞれ違う良さがあって、でもみんなアトリエクッチャネが好きという思いは共通だから。」と戸村さん。

「それに、手に取ってくれる人たちを楽しませたいという考えもみんな同じですよね。」と続けて上原さん。



もともとアトリエクッチャネのメンバーは県外出身者が多かったそうで、戸村さんは「そんな僕たちが伝統的な焼き物を作るよりも、内地で生まれ育った僕たちの目から見た沖縄の良さを作品に落とし込めたら…という思いは、沖縄に住みはじめてずいぶん経ちますが、ずっと持ち続けています。


例えば、人気シリーズの輪切りのゴーヤー柄ですが、沖縄の伝統の焼き物にはないデザインなんです。ヤギも、イリオモテヤマネコも。良いと思ったらまずは作ってみよう!と思うのが僕たちで、それがアトリエクッチャネらしさにつながっているのかもしれません」と話します。


作り手のワクワクは、使い手にも伝わるはず。食器棚から器を取り出す際、お料理を盛り付ける時、食事中、そして食後の洗い物まで楽しませてくれるアトリエクッチャネの可愛い器を、あなたも一度手にとってみませんか?